2018-01-01から1年間の記事一覧

『陰謀の日本中世史』について(その7)源実朝暗殺事件(その1)

『陰謀の日本中世史』俺はまだ全部読んでない。文字に目を通すだけならそんなに時間かからないけど、信長のことはそれなりに理解できても、それ以外を消化するのは時間がかかる。ただ批判の矛先はやはり黒幕説・真犯人説みたいなのが中心のようだ。しかし「…

『陰謀の日本中世史』について(その6)ルイス・フロイスについて

次に 信長が驕り高ぶり自己神格化を図ったがゆえに全知全能の神デウスの怒りを買い非業の死を遂げた、というストーリーをフロイスがでっち上げたのだろう。(P218) について。そもそもこれは現在の学界における定説なのだろうか?脇田修氏や三鬼清一郎氏は…

『陰謀の日本中世史』について(その5)「愛宕百韻」について(2)

もう一度大村由己の『惟任退治記』(天正10(1582)年) 扨五月廿八日、登愛宕山、催一坐之連歌、光秀発句云、 ときは今あめかしたしる五月かな 今思惟之、則誠謀反之先兆也、何人兼悟之哉 ここには「雨が下しる」とは「天下を統治する」という意味だという説明…

『陰謀の日本中世史』について(その4)「愛宕百韻」について(1)

次に しかし、これらの事件は現在では江戸時代の作り話と考えられている。(P206) について。これは「怨恨説」の根拠となっている二次史料の記述のこと。確かにこれらは史料的に問題ある。ただし「作り話」とは ないことをいかにも本当らしく作った話。また…

『陰謀の日本中世史』について(その3)

『陰謀の日本中世史』第六章「本能寺の変に黒幕はいたか」(P203〜P264)から、「隠された真実・歪められた歴史」的な記述を探してみる。 光秀と関係のあった人々、事件の真相を知る人々は後難を恐れて口をつぐみ、証拠隠滅を図ったものと思われる。 (P204…

『陰謀の日本中世史』について(その2)

具体的な話をする。といっても俺がそれなりに知ってるのは信長に関することだけだが。 公家の吉田兼見は、本能寺の変後に勅使として光秀と交渉したこと、明智光秀敗北後に日記を書き直して光秀との交渉に関する記述を抹消したことなどから疑われたが、(中略…

『陰謀の日本中世史』について(その1)

呉座勇一氏の『陰謀の日本中世史』 (角川新書)売れていて、なおかつ評判が良い。陰謀の日本中世史 (角川新書)作者: 呉座勇一出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/03/09メディア: 新書この商品を含むブログ (13件) を見るというわけで滅多に本を買わない俺…

付喪神について(その15)

あと残るは「つくもがみ」という名前の器物について。なんだけどほとんど調べてない。 まず有名な付藻茄子。 「九十九髪」「作物」とも記される。 ⇒静嘉堂文庫美術館 | 唐物茄子茶入 付藻茄子 とある。ただ、どの名称がどの史料に載るかといった詳細がわか…

付喪神について(その14)

次に「精霊」について。 陰陽雑記に云ふ。器物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑す、これを付喪神と号すと云へり。 我に若し天地陰陽の工にあはば、必ず無心を変じて精霊を得べし。 辞書的には「精霊」とは せい‐れい【精霊】 1 万物の根源をな…

付喪神について(その13)

まだまだ論じたいことはあるけれど、もう限界。一番気になるのは、「精霊」「心」「情」といった言葉が何を意味するのかということ。 「心」については 我に若し天地陰陽の工にあはば、必ず無心を変じて精霊を得べし。 或時、妖物の中に申しけるは、「夫れ我…

付喪神について(その12)

『付喪神記』は内容に矛盾があるように見える。矛盾してると断言できれば話は割と簡単だけれど、もしかしたら矛盾ではないかもしれないと考えて理解しようとすると、何通りもの可能性が出てきて深みにはまってしまうのであった。 陰陽雑記に云ふ。器物百年を…

付喪神について(その11)

こゝに康保の頃にや、件の煤払とて、洛中洛外の在家より取出して、捨てたる古具足ども、一所に寄り合ひて評定しけるは、「さても我等、多年家々の家具となりて、奉公の忠節を尽したるに、させる恩賞こそなからめ、剰へ路頭に捨て置きて、牛馬の蹄にかゝる事…

付喪神について(その10)

付喪神についてはまだまだ論じたいことがある。きりがない。 『付喪神記』より。 既に其の夜にもなりしかば、古文先生の教への如く、各其の身を虚無にして、造化神の懐に入る。彼等すでに百年を経たる功あり、造主に又変化の徳を備ふ。かれこれ契合して忽ち…

付喪神について(その9)

茶器の「九十九髪茄子」についてはもう少し調べてから書こうと思ってたんだけど、さっき別件調べてたら面白い話みつけたのでそれについて 加賀国金沢藩主前田利常の言行録『微妙公御夜話』という史料がある。そこに 一、御家のつくも髪の茶入、京都より売り…

付喪神について(その8)

付喪神といえば器物の妖怪だということで、日本・中国あるいは朝鮮の器物妖怪との比較研究がもっぱらなされているの。しかしながら年を経ると妖怪化するのは何も器物に限ったことではない。そのもっとも代表的なものは猫又であろう。ところがネット検索して…

付喪神について(その7)

「付喪神」についてのここまでの俺の推理まとめ 「つくもがみ」とは本来は妖怪でも何でもなく単なる「不用になった古道具」のこと(使用年数も関係ない)。 「つくもがみ」の名前の由来は『伊勢物語』の「つくも髪」から 「つくも髪」=白髪=高齢女性=男か…

「淀君」が蔑称だという珍説(追記その3)

『絵本太閤記』の「淀殿」「淀君」 勝家籠北庄城 此姉姫は後に秀吉公の妾秀頼の御母堂淀君と申せしは此御方也 佐々成政生害 此ころ天下の美人且秀才と時めきて秀吉公の御覚も他に勝りたる淀殿に見せばや此人いかに賢くとても此花の出所は知られまじと黒百合…

「淀君」が蔑称だという珍説(追記その2)

まあ「淀君」という名称がイレギュラーだというのはその通りだろう。彼女は豊臣家の人間といっても、彼女は「浅井氏」であり、「藤原姓」で「豊臣姓」ではないと考えられるから、摂家の女性に与えられる「君号」というのも正確ではない(ここのところ無知な…

「淀君」が蔑称だという珍説(追記)

「淀君」が彼女を貶めるために遊女のイメージを植え付けたというのは俺にとって非常に厄介な問題なのだ。というのも俺は俺で彼女と遊女の関係が気になってるから。ただし、それは貶めるためといったこととは別次元の話として。といってもこれは空想の話でし…

「淀君」が蔑称だという珍説

もう8年も前に書いたことだが、改めて書いてみる。「淀君」が蔑称だという説は小和田哲男氏と田中貴子氏がほぼ同時期に主張した。小和田氏の方が早いが、田中氏はそれを知らなかった由。 そもそも、通称の淀君という名前からして悪意にみちた意図的なネーミ…

付喪神について(その6)

先に『付喪神記』は『付捜神記』だという仮説を立てたが、よくよく考えれば同様にしてもう一つの可能性が浮かんでくることにも気づいた。『付喪・神記』である。「付喪」は「ふそう」と読め、すなわち「扶桑=日本」に通じる。 これまた突飛な考えだというこ…

付喪神について(その5)

「付喪神」が「つくも髪」に由来することはほぼ疑いないと思っている。次の問題はなぜ「つくもがみ」を「付喪神」と漢字表記するのかということ。これについて解説してるものは見つからなかった。俺は今まで「狐憑き」などの「憑き」と同じで憑依するという…

付喪神について(その4)

『付喪神絵巻』以前に付喪神なる妖怪は存在したのか?これは重要な問題 だが確実なことはわからない。個人的には『付喪神絵巻』による創作の可能性が高いと思う。今後その前提で考察を進める。 なぜ『付喪神絵巻』は器物の妖怪を「付喪神」と呼んだのか?当…

付喪神について(その3)

先に「『付喪神絵巻』以前に「付喪神」という名前の妖怪に関する伝承や信仰は無かった可能性が非常に高いのではないか」と書いたけれども新情報。 正応4年(1291)の奥書がある河野美術館蔵『伊勢物語註 冷泉流』に もゝとせに一せたらぬつくもかミと云ハ、…

付喪神について(その2)

そもそも論として『付喪神絵巻』はどこまで信用できるのか?もちろん付喪神など実在しないのは当然だが、そういう意味ではなくて『付喪神絵巻』に書かれていることは、どの部分が著者の創作で、どの部分がそれ以前から存在していた話なのかということ。 陰陽…

付喪神について(その1)

名前だけは聞いたことがあるけれども、付喪神とは何かということをちゃんと考えて見たことはなかった。「付喪神(つくもがみ)」の「つくも」とは「九十九」のことだということさえ、言われてみれば確かにと思うけど、今まで気付いていなかった。なぜ「九十…

なぜ「違和感を感じる」のか?

「〇〇感」界の圧倒的王者「違和感」。 「違和感を感じる」は「違和感」の一割未満。「〇〇感を感じる/ 〇〇感」は熟語によってかなりのバラつきがある。「存在感を感じる」は数で「違和感を感じる」に迫り割合は圧倒的。何でだろう? Google 検索 「違和感…

片瀬久美子氏炎上

⇒片瀬久美子さんがスリーパーセルをスーパーセルと空目→しばき隊界隈が片瀬さんを批判→片瀬さん、しばき隊界隈と訣別宣言 - Togetter ⇒はてなブックマーク さて、これをどう考えるかだが、そもそもの発端は先の三浦瑠璃氏のスリーパーセル発言騒動にあるわけ…

「スリーパーセル」論争の不思議

三浦瑠麗発言の争点として大いに議論されているものは 〇 スリーパーセルは実在するのか? 〇 スリーパーセルがいるとして大阪が危ないのか の二点であろう。スリーパーセルといっても様々な目的があるだろうが、この場合の「スリーパーセル」とは、北朝鮮が…